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めいっぱい頭を下げて、封筒を捧げ持つ。
すっと手が軽くなって顔を上げると、理事長がまじまじと封筒を見つめていた。
「契約は三月末までだったよねぇ……」
「ご迷惑でなければ最後まで勤めさせていただきたいと思っています。
ですが、他の生徒や保護者の方たちのことを思うと、私がこのまま続けていくのはどうかと思いまして」
「そうかなぁ。来年度も更新してもらおうと思ってたんだけど」
俺の渡した封筒を、こねくりまわして理事長が言う。
俺もそのつもりだった。
なんだかんだ言ったって、この仕事、けっこう気に入っていたんだ。
臨時教員を何年か続けて、それから正式に採用されたらいいなあ、なんて。
漠然と考えていたこともある。
だけど、仕方が無い。
仕事は他にもある。
でも藤沼は一人だけだ。
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