10.終わりよければ全て良し?

5/29
前へ
/285ページ
次へ
「気持ちは変わらないの?  そう。じゃあしょうがないねぇ」 封筒を机に置き、何やら紙を取り出した。 「ここサインしてちょうだい」 差し出された紙の最下部。 署名の欄を指差して、ついでにペンも渡してくれる。 何の書類だ? 退職のか? 書類にはびっしりと文字が敷き詰められているが、理事長の腕が邪魔をして読めない。 中身もわからずサインをするのは避けたいところだが、まぁいい。 まさか借金の保証人ってこともあるまいし。 「書けました」 ペンを置いて理事長を見る。 もともとにこやかな顔つきが、にんまりしたのは気のせいか? いや、違う。 気のせいじゃねぇ! 「捺印は後でいいからねん。 はい、校長。この紙、なくさないでねぇ」 俺の署名入りの書類が、理事長から校長に手渡される。 温和な校長の顔にも笑みが浮かんで。 だから、なんなんだ、その書類!
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6631人が本棚に入れています
本棚に追加