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「う゛……!」
耐え難い痛みに優輝(ゆうき)は意識を取り戻した。
――困惑。
視界に写るのは想像を絶する世界だった。
5メートル分はある地面の凹み、そのクレーターに似た掘りの中心に優輝はいた。
ふと、自分の身体を見ると、服はボロボロに切り裂かれ、その裂かれた服の間からは痛々しいキズが顔を覗かせる。
キズを見たことで、軽い吐き気に襲われる。
キズの痛みに耐えながらクレーターの断面を登っていくと、登りきった所で、1つの疑問が頭を過った。
――皆はどこに……?
だけれど優輝は、そんな疑問の事何てすぐに忘れてしまったのだ。
仲間がどうでも良くなった訳じゃない、まして疑問の答えが見つかった訳でもない。
――それらを一瞬にして忘れてしまうような現象が優輝の目の前で起こったからだ。
1人の少女。
1人の少女が目の前に突然現れたのだ。
「あ……」振り絞っても、声が出なかった。
2人の目線が交差する。その透き通った紫色の瞳に視線を奪われる。
容姿端麗。その少女にピッタリな言葉だ。
優輝と同じ学校の制服に身を包み、その茶色い髪の毛は腰の位置にとどくほどまで伸びている。
その美貌は、数多の男を虜にし、数多の女に嫉妬を覚えさせるほどだった。
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