たとえば君が想うとき

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 あ、あとね。もう少しで終わりそうだった君のファンデーション。ある朝粉々になってて、やっぱりもう寿命だったかーって嘆きながら新しく変えていたけど、あれ、本当は僕が落としちゃいました。怒られると思ってなかなか言い出せませんでした。  あと、僕が勝手に撮っておいた君の寝顔写真。携帯のフォルダ見せてたら出てきちゃって、慌てて隠したけど消せって君に怒られたよね。あれね、消したって嘘ついたけど、本当はSDカードに入っています。ごめんなさい。  ああ、そういえば。それからね……うん。駄目だな。涙が止まらないや。    駄目だなあ、僕。君に言ってないこととか、言いたかったこととか、まだこんなにあるのにね。あんなに長い間一緒にいたのに、どうして言わなかったんだろう。  思い出せば思い出すほど涙が溢れてきて、僕ってこんなに水分あったんだなあとか、すごくどうでもいいことを考えた。そうしてまだ座り込んで泣きじゃくる君の前にしゃがむ。頭を撫でてあげたかったけど、まるでいつか観た映画のワンシーンのように、するりとすり抜けただけに終わってしまった。
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