たとえば君が想うとき

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 大好きだよ。  大好き。  こんなに思っているけれど、口に出したのは数回だったね。もっと言っておけばよかったね。  レストラン頑張ってね。僕はもう手伝ってあげられないけど、きっとみんなが助けてくれるから。  新作に悩みすぎて、お風呂に入るの忘れちゃ駄目だよ。もう無理やり入れてあげることは出来ないから。  あとね、猫を追いかけて迷子になっちゃ駄目だよ。夢中になりすぎて服の裾とか切れてるときあるから、怪我をしないようにね。  それと、もう君は紅茶とウーロン茶を間違うことはなくなったんだから、そんなに毎日眺めなくても大丈夫だよ。  あと、そうだな。もう一つ。もしもね、たとえばの話なんだけど、君が僕を想ってくれるとき。そんなときがあったなら、きっと笑顔になってほしい。時間が掛かるかもしれないけど、きっといつかはそうなってほしい。  伝えたいことがどんどん溢れる。だけど僕はふと思い立って空を見上げた。相変わらず真っ青な空は、こんなに大粒の涙を流す君を静かに見下ろしている。  空気を湿気らせていたもくもく雲はいつの間にやら潮風に流され、青く塗ったキャンパスのように大きく、広く。  それをみていると何でも出来そうな気分になってくるのに、僕は無力でちっぽけだ。たぶんもう僕は神様に嫌われていて、そんなことは分かってるんだけど、やっぱり僕には願うことしか出来なくて。
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