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 カップの中の黒い液体を飲み干すと少し離れた所のゴミ箱へと投げるが、カップは縁に当たっただけで中へは落ちずに床に転がった。  カップを拾いに行くのも面倒で、無視を決め込んでいたら誰かがそれを拾い上げてゴミ箱へ捨てた。 「暇なのか?」  ヤンがゴミ箱から俺の正面へと歩きながら尋ねる。 「暇ですね。やることないので、自主的に休憩してたんで」  いつ非常事態になっても良いようにブリッジには常にオペレーターが常駐し、周りに異常が無いか確認しているので、本来ならば暇などではないのだが、やる気の起きないオペレーターなんて居たって何の役にも立たない。 「じゃあ、俺に少し付き合えよ。行くところがあるんだ。お前の意見、聞かせてくれ」 「え、ちょっと、俺は…」  ヤンが腕を掴んで引っ張って行こうとするので抵抗すると、 「やる気の無い部下はどこに連れていっても良いって、許可は貰ってる」  と言われてしまったら、ブリッジを離れられないなんて言い訳は通用しないので、諦めてヤンに付いて行くことにした。
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