25人が本棚に入れています
本棚に追加
ところが。
バラモン夫婦はこの最高級の求婚者でさえ文句を言った。
「まだ一国の王にもなっておらんくせに、白き牝鹿を求めるなど早過ぎるわい!」
年老いたバラモンが王子を叱りつけ、バラモンの妻はジョイスから取り上げた真珠の首飾りの値踏みをしていた。
「では、私がカレクト王になれば、娘さんは頂けるのですね?」
真剣に問いかける王子に、バラモンは渋い顔をしながら答えた。
「いいや。このインヂア全土を統一しなければジョイスはやらん。本物の蒼き狼なら、それくらい容易かろう。」
「お父様!」
今にも泣き出しそうなジョイスの頬をバラモンは叩いた。
「全ては必然。白き牝鹿に生まれた時から、おまえの夫は蒼き狼しかおらんのじゃ!」
一見もっともらしく聞こえるが、賢いジョイスにはわかっていた。
両親はこの王子を焦らして沢山の贈り物を絞り取りたいだけだと。
それが証拠に年老いた母親は従者達から貢ぎ物をせびっている。
最初のコメントを投稿しよう!