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「わかりました。まず、カレクトを手に入れて宮殿の財宝を積んでから、娘さんをお迎えに参ります。」
若い王子はバラモン夫婦の言葉を真に受けた。
「インヂア全土を統一するには、どうしても白き牝鹿が必要です。その足がかりとして、この国の王座を必ず手に入れます。」
「王子様!」
たまらずジョイスは叫んだ。つまらない両親の欲を真に受けて、健在のカレクト王を殺すとこの王子は宣言したからだ。
「あなたは間違いなく蒼き狼です! 無用な血を流さずに私をさらってくださいませ!」
「この、愚か者めが!」
今度はバラモンの妻がジョイスを杖で叩いた。
「考えてみれば、インヂア全土を統一する前に、ジョイスが年頃を過ぎてしもうたら価値がなくなる。カレクト一国で我慢してやるわい。」
欲深い両親に押さえつけられながら、ジョイスは悔し涙を流さずにいられなかった。
(こんな事になるなら両親に会わせるんじゃなかった!)
ビーシュマ王子は身に付けていた装飾品を全てバラモン夫婦に与え、泣き続けるジョイスに再会を約束して去ってしまった……。
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