25人が本棚に入れています
本棚に追加
喜びにわくバラモン達を涙目で見つめながら、彼女も我が子を一目見たいと思いはじめた。
しかし、出産直後の彼女は息をするのが精一杯で、ほとんど声を出せなかった。
「女神様。あなたのお名前を聞かせてください。」
バラモンの問いかけに、彼女は息も絶え絶えに答えた。
「……ジ、ジョイス……。」
するとバラモンは片手に持った鉈を振り下ろし、彼女の頭をかち割った!
「“天空”から来た淫乱な邪神め。白き牝鹿さえ手に入れれば用はない。産婆、この亡骸を焼き捨てろ。」
「心得ました。」
産婆は金貨を一枚もらうと、彼女の亡骸を粗末な布でくるみ、引きずりながら出て行った。そして自分の家の庭で亡骸を焼き、その灰を川へ流した。
こうして。
生まれた女の子はジョイスと名付けられ、流血と野心が付きまとう人生を送る事になった……。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!