初恋と宿命

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 年老いたバラモン(インドの聖職者)夫婦は、手に入れた神の娘ジョイスに厳しく言い聞かせた。 「全ては必然。おまえは世界を統べる蒼き狼の妻となる宿命を背負った白き牝鹿じゃ。覇王の妻に相応しい女になれ。」  幸いな事にジョイスはこの話に夢を持ち、容姿を美しく整える術からあらゆる薬の調合まで、何に対しても興味深く学び尽くした。  近所の子供達と遊ぶ暇もなく、一切の家事や祭事や学問を学び続けた。  世界の覇者となる夫との出会いを夢見て、ジョイスは自分を美しく磨き上げながら、あらゆる知識を両親だけでなくアーシュラム(世捨て人の村)の賢者を訪ね歩いて身につけた。  そのため、わずか十歳にしてジョイスの元へ求婚者が次々と訪れ始めた。  バラモン夫婦は求婚者達から贈り物を平然と受け取り、難癖つけて追い返す事で裕福な生活を送るようになった。  ジョイス本人も、腰に太陽を穿いた蒼き狼の訪問を心待ちにしながら、常に自らを磨き続けた。
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