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さらに数年の月日が流れた。
ようやく待ちわびた天からの雨に大地が喜びに揺れる中、ジョイスはアーシュラムの外れにある泉で沐浴をしていた。
褐色の肌に浮かぶ白い鹿の痣を眺め、ジョイスは憧れの蒼き狼へ想いを馳せた。
(どんな方かしら。勇敢で優しくて素敵な方に違いないわ。)
そんな憧れの人を想う度に、ジョイスはより美しく賢くなろうと決意を新たにする。
そこへ白馬に乗った若者が現れ、しばしジョイスの裸体に見とれた。そして咳払いをして、威厳に溢れた声をかけた。
「そなたは、この泉の精霊か?」
しかしジョイスは首を振って否定した。
「私は世界の覇者となる蒼き狼を待つ、白き牝鹿ジョイスと申します。」
泉の娘が発した声の美しさに若者はしばし惚けた。
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