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馬上の若者は白馬から降り、ジョイスに真珠の首飾りを捧げて名乗った。
「私はここカレクト王国の第一王子ビーシュマと申す。そなたが白き牝鹿なら、私は蒼き狼となり世界を統べよう。」
ジョイスは改めて目の前の若者を見つめた。
若さ故に燃えるような情熱と野心が、瞳だけでなく全身から満ち溢れた『覇王』に相応しい若者だった。
これまでジョイスの元へやって来た求婚者は、全てその両親か家来を連れていて、金で美しく賢い嫁を買い取ろうとする下心が透けて見えた。
しかし今ジョイスの目の前にいる若者は違った。
真剣に目の前にいるひとりの娘を求める情熱に溢れていた。
「それでは、私の両親に会って頂けませんか?」
努めて冷静に答えながらも、ジョイスもまた若者の情熱に、心臓の鼓動を高鳴らせていた。
この方こそ、待ち焦がれた蒼き狼に違いない。そうジョイスは確信していた。
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