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「ゆかり、元気ないけどどうしたの?」
いつもの笑顔が見られないゆかりに、俺は分かりきった質問をする。
今回もゆかりから呼び出され、いつものように二人で飲んでいるのだ。
荒らしの件が相当堪えているのだろう。
ゆかりは瞳を伏せながら、口を開く。
「……ううん、なんでもない」
ゆかりは俺にSNSのことを話したくないのか、言葉を濁す。
彼氏の死については、まだゆかりは知らないはずだ。
しかし、面白くない。
俺は大きくため息を吐き、備え付けのテレビに目をやる。
画面には田中健太とかいうリストラ社員が行方不明になったという、つまらないニュースが流れていた。
ゆかりの口元が、何故か微かに微笑んだような気がした。
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