236人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「あ、こんばんは。玲愛ちゃん」
ゆかりは私に気付くと、ニッコリ笑ってあいさつをしてくる。
目の前でクラスメートが死にそうだというのに。
「そ、それより! 加藤君を助けなきゃ……」
「なんで?」
ゆかりは笑顔のままだ。
「なんでって……だって……」
「加藤君はね? ここで死ぬ運命だったんだよ。だって、いつも問題ばかり起こしてるから」
「でも……」
「人間社会ってね。歩みを合わせることが大事なんだってママが言ってたの。かけっこも勉強も、みんな一緒がいいんだって」
そう言ってゆかりは、加藤が使っていた草を足で掘り返す。
「や、やめろよ! 玲愛、助けてくれよ、玲愛!」
悲壮な声が私の耳に飛び込んでくる。
しかし、その訴えが実を結ぶことは無い。
私は耳を押さえ目を閉じる。
数秒後、私が目を開くと、そこに彼の姿は無かった。
最初のコメントを投稿しよう!