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「そう。だからあたしはあの子を殺すんだと思う。でも、それじゃ納得いかない。本当に殺したのは麻奈穂なの?」
「私が知った事ではないが、未練が強すぎると後で支障をきたしてしまう。それは、此方としても困る」
悩んだ結果、刀を今度は横にひと振りした。すると杖に変わっていった。綺麗な蒼い水晶珠が埋め込まれていた。
それから今度は、鼎には聞き取れない外国語、らしき言葉を唱え杖を振りかざした。
「―――――ッ!!」
無透明な空間から蒼一体へ。そう見えたのは一瞬で 、杖が光り出したからだ。
目映さに目を瞑る。再び開くと――。
「!! うそよ、だって、だってッ!イヤァー!!!!」
見えたのは少女が二人と、笑顔がとても幼い子供が一人。鼎、麻奈穂、……緋唯斗。
目の前は殺された当日、すなわち、弟が殺された日だ。
「なんで今…あたしは、緋唯斗を殺した犯人が知りたいだけなのよ!もうあの日なんて忘れたいのにっ!!」
「真実を知るにはそれなりの覚悟が必要だ。犯人だけが知りたい?そんなのは甘えだ。知るためには現実を知らなくては。見ろ…」
目を反らそうとする鼎だったが、目は開いたまま、もはや全身の筋肉が動かない。
「…これが現実だ」
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