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行内の金庫室では、人質となった15名の内の5名が閉じ込められていた。 5名は手を後ろに廻し、両手の親指を結束バンドで縛られ、壁を向く様に座らされていた。 その中心に、黒い戦闘服に身を包んだ2人の強盗が、お互い口もきかず、肩から3点式のスリングベルトに釣られたMP5を下げ、直立不動で立っていた。 彼等は、最新式のタクティカルベストにストライクプレートを入れ、メインウエポンも狙撃用のM14ライフ以外は統一されていた。 まるで、軍隊の特殊部隊並の装備だが、彼等の覆面が、特殊部隊とは違う異様な不気味さを漂わせていた。 彼等は、有名人の覆面を被っていたのだ。 金庫室にいる2人は、ブッシュとクリントン。 金庫室の扉が開くと、ゴルバチョフの覆面を被った男が入って来た。 「クリントン、ちょっと来てくれ……」 「わかった」 ゴルバチョフはクリントンを連れ、銀行ロビーに移動した。 ロビーには人質10名が、腹ばいに寝かされていた。 「ゴルバチョフ、何かあったのか?」 「ああ、奴らが動きだす様だ……」 銀行の受け付けカウンターの後ろに、カウンターと同じ高さになる様に机を2つ並べ、マスクを被っていない一人の男が、プローン(伏せ撃ち)でスコープを付けたM14ライフルを構えている。 その横では、マスクをかぶらず、黒い戦闘服を着た東洋系の女が、大きな単眼鏡を覗いていた。 女がクリントンとゴルバチョフに気付くと、単眼鏡から顔を上げる。 「SWATが動き出すみたい。全員ヘッドセットのスイッチを入れてチェック。持ち場について」 「OK、京子」 クリントンとゴルバチョフは、マスクを少しだけ持ち上げ、耳に無線用のイヤホンとマイクを付け、首に発信用のスイッチが着いたベルトを装置した。 「チェック」 無線を装着した者から順に、連絡が入る。 全員無線のチェックが済むころ、銀行の外から拡声器を使い、交渉役であるイーサンが話し始めた。
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