《望郷》

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     海原の遥か遠くの  大和を夢見て  意味のない死を前に  生きた屍は  ただ泪に暮れ呟く    右も左も  見渡す限り骸の山です  腕 足 目玉 耳 肉か骨か  或いは こころ      息ある者は  なにかしら欠けています  人である者は  何処にもいません      此処は  生きてある地獄なのです        嗚呼  もうなにも  見えない  聞こえない    我は 逝く  何処へ行く  地獄に死して  何処へ行く      せめて せめて  思いは千里を越えて  辿りつけ    身は朽ちて 土に還り  魂は悪夢の迷路を  さ迷えど    思いは  白波けたてて走りゆけ    桜舞い散る  うつくしの彼(か)の地へ    
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