水曜日 【二日目】

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廊下を進んでいくとひとつの部屋から人が居る気配がした。 入るとソファーに背中を預けて下をうつ向いたままの男が居た。 「…………っ」 気づいたのかばっと顔をあげた男は昔より大人になっていて………少し窶れた様に見える彼が居た。 「…………え…?」 『よっ。鍵開いてたぜ?不用心だなぁ~』 切れ長な目が大きく開かれる やっぱり電話もせずは駄目だっただろうか… 「え………は?ほんも…え?………」 『落ち着けって……』 何をそんなに驚いてるんだろうか……… 『これ……返しに来たんだよ…』 彼に小さい箱を見せる 「それ………、」 『預かったまんまだったからな………』 会えた嬉しさでなかなか笑えなかったがやっと笑えた様な気がした。 「………触れて…いいか?」 『は?……なんで?』 ゆらゆら揺れる彼の目が何故か不思議に思った。 ふらふらと窶れた体が此方に向かってくる。 前は変わらなかった身長は今では越されてしまった様だ。 「お願い……」 『……………分かった。』 ギュ… 彼の手が僕の手を握る。 『暖かいな………』 「…………お前は…冷たいな……」 彼の手を見ると手も彼の方が大きいらしい。 『成長したな………ほとんど抜かされた気がするよ……』 「なぁ……………」 頭上から彼の声が響く 声も前より大人で、低くて綺麗な落ち着いた声。 『なんだ…………?』 「前からいいたかったことがあったんだ………」 彼と目が合う。 「俺、前からな……『待ってくれ……』なんだよ……」 不安そうに瞳が揺れる。 何故そんなに焦ってるのかが分からない。 なんとなく彼が言うことが分かった、僕も同じだから。 昔から、やっと見てくれたんだな……… 『僕が言う。………好きだ、昔からずっと……』 言わなきゃ、今言わなきゃ僕は何故か思った 焦った。 不安な心情で彼を見るとまた目を大きく見開かせていた。 「ホント………か…?」 『嘘なんてつかないよ…』 好きだ、ずっと前から。 ずっとずっと想ってた。 やっと言えた。 『好きだよ…大好きだよ…』
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