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それからどれだけ経ったのか、さっきの店員はもうとっくに姿を消しているんだけれど、その場から動けなくて。
しかもあのショップから視線もそらせずにいた。
またあの笑顔を見たいと思ったんだ。
でも、待てど暮らせど出てくることはなくて。
そのうち、
「おい航、いつまでここにいるんだよ。もう勘定も済ませてきたぞ」
そう言って、俺の上着を手渡してきた。
つか、勘定済ませたって……
俺はどれだけの時間をここで過ごしていたんだ?
ちらりと腕時計を見ると……
は?
一時間近く、この場所であの店員が出てくるのを待っていたらしい。
「航はここで何してたんだよ。もしかしてナンパか?」
「はあ? そんなことしねーよ」
一目惚れした女が出てくるのを待っていたなんて……
そんなこと、コイツらには言えねー。
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