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俺は女にアクセサリーを贈ったことはない。
でもいつか、俺もこういうものをプレゼントできるような相手ができるんだろうか。
なんて考えていたら、ふと、このショップへ入った目的を思い出して、辺りを見回した。
奥の方にも足を踏み入れて、怪しいくらいにきょろきょろしながら探してみる。
「!」
――いた。
陳列されている商品を綺麗に並べ替えているからか、さっきのような笑顔は見られないけれど、その姿を見つけただけで体全体が心臓になってしまったかのように、全身でバクバクという音を感じる。
ほんとは声をかけようと思っていた。
けれど、それどころか足が一歩も前には進まない。
今の俺には、首から下げているネームプレートに書かれた文字を見ることが精一杯で。
『土原亜衣』
それが、俺が一目惚れした女の名前だった。
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