664人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
桜は満開を迎え、ぽかぽかと春の陽気が漂い始めた四月。
俺は壇上に立ちながら、体育館に集まっているたくさんの生徒達を眺めていた。
五年前までは、状況は違えど、大勢の人間を前に声を大にして叫んでいた。
あの頃は暴走族の総長という立場だった。
けれど、この五年近く、ひたすら教師を目指して頑張ってきた。
そしてその努力が報われて、今日からは念願の教師だ。
そして今、教師として初めて生徒の前に立った。
でも、こうやって大勢の人に向かって話すというこの状況に、心臓があり得ないくらいに早く動いている。
たかが数百人の前だぞ?
族にいた頃は、こんなことザラにあったじゃねぇか。
緊張なんて言葉、俺には無縁なはずだったのに。
何で今更……
こんなんじゃ、生徒にも嘗められちまうだろ!
あー、くそっ!
鎮まれ、心臓!
最初のコメントを投稿しよう!