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最寄り駅から自宅への帰り道。途中にあるコンビニに差し掛かった時、見慣れた車が駐車しているのを見付けて嫌な予感がした。 通り過ぎようとすると、運転席から見知った男が降りてくる。 「萌 」 名前を呼ばれて、チラリと一瞥すると、萌は速度を緩めずに行き過ぎようとする。 「萌……っ 」 掴まれた腕を振り解こうとすれば、もう一度名前を呼ばれた。 「夕べは、何処に行ってたんだ? 」 「俺の名前を、呼ぶな 」 萌はなるべく顔を見ないように、腕を取り返そうとする。二度、三度と引くが、相手は手はガッシリと萌の腕を掴んでいて離れない。 「離せよ 」 「身体は大丈夫なのか? 」 噛み合わない勝手な会話に、イラッとして奥歯を噛む。 「大丈夫な訳、ねぇじゃん。身体は痛いわ、突っ込まれたとこ痛いわで最悪。でも、体調聞くより先に、何か言うことあんじゃねぇの? 」 「……悪かった、酷くして 」 思ったよりあっさりと謝った桐谷に、萌は少し驚いた。けれど、これくらいで許す訳にはいかない。 「同じこと、海月ちゃんとサトにも言えよ。それから、俺の気持ち、弄んだこともちゃんと謝れ 」 「弄んだって、どういう意味だ? 」 知らない振りをする男に、カッと血が()ぼった。 「分からないんなら、話すことなんかない」 勢いを付けて、自分の腕を取り戻すと、萌は痛みを堪えて自宅に向かって走り出した。 「おい、待て! それで、夕べは一体何処に…… 」 20歳を過ぎた男に、何んの心配をしていると言うのだろう。桐谷の間抜けな台詞に、苛つきが増す。 「萌っ! 」 だから……っ、俺の名前を呼ぶなってば! じんと目の奥が痛くなってくる。 追い掛けてくる桐谷の声が、悲しくて切ない。 可愛いと言ってくれた、好きだと囁いてくれたことまでもが、全部嘘だとは思いたくなかった。 いや、きっと嘘ではないだろう。きっと、想いの分量が少ないだけで。 自宅の扉を開けて飛び込むと、後ろ手で鍵を掛ける。流石に家族の住む家の中までは追っては来ないだろう。
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