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自分が吐いた血に自身が映った
掠れた視界には真っ黒なシルエットしか見えないが、
これは確かに目の前の魔神の様な風貌だ。
歪に捻れた角に全身を被う君の悪い肌。
ゆっくりと立ち上がることで、
背丈が見上げていた魔神の顔が目の前に在ることで高くなったことはわかった。
嵐が巻き起こっていた。
今まで気になることもなく漂っていた魔力とやらが、気味悪い存在感を発している。
そうか、一般人の中の一般人だった俺を、無能な俺を
無理矢理に強化し、力を与えるにはこうするしかったのだろう。
俺「ヴォー…」
…女神め……
始めっから言っとけよ。
自分の声は既に人間の頃のものでなかった。
その後に続かせようとした言葉を出したくなくなった。
後ろで人間が騒ぐ声を聞いた。
いや、悲鳴だろう。
俺は怖れられる存在になったのか?
聞きたくなかった。
いや、聞けないか。
俺自身を人間から隔離するために、
残り少ない全魔力の80%を使い、結界を張ってやった。
最高傑作の結界だ。
聞き覚えのある声がなくなった。
暴風等による騒音と
「醜い姿になったな。」
と嘲笑する魔神の声しかない。
お前が言うな。
そう言ってやりたかったが、今は早くこの時間、この場所から離れたかったので、魔神の言葉は自動的にスルーすることになった。
「これで終らせようや。」
格好よく言ってやる。
スルーしたことをスルーしてくれて、
「全力で応えてやろう。」
とせいぜいラスボスのセリフを言ってくれる。
周囲の嵐が更に酷く吹き廻る。
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