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「三郷村、全てが沈むというのか?
全く全部?
温泉も?学校も?役場も?旅館も?
………三郷神社も?」
「…………。」
押し黙る役人。
この場合、無言は肯定である………
「村ごと…………
みんな、沈むってのか………」
「本当に申し訳ない………!!」
役人は、ぎりっと歯を喰い縛り、
再び深々と頭を下げた。
……国の役人である彼は、その事実を伝えることしかできない。
都市の水事情に基づいて、過疎化の進む村を一つ潰してダムを作る。
これが国の決めたことならば、彼にはそれを伝えることしかできない。
いくら訴えかけられようと、彼自身が同情をしようと、
彼ができるのはそれだけ。
謝ることだけなのである。
「僕にもあなたの気持ちはよくわかります……!
僕の生まれたのは、貴方の三郷村のすぐ隣の金日切村です!
今、自分の故郷が貴方の村のようになるとしたら、どれだけ落胆するかわかりません、ですが!
僕にはどうしようもありません!こうして謝ることしかできない!
………都心の水不足は深刻です。
安定した供給が得られていない今、どこかにダムは絶対に必要なんです。
どこに作れば……一番経済的に無理がないか……
人口比率、経済状態、平均年齢……すべてを合算した結果、
残念ながら三郷が一番経済的に被害が少ないという判断を下されたんです………」
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