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「おーい?どしたー?」
はっとして私は顔を上げた。耕祐が、あの頃とは比べ物にならないくらい大きくなった耕祐が、私を見下ろすほどの距離にいた。
「何?気分悪いとか?」
「…ごめん。なんでもない。ちょっとめまいしてただけ」
「まじで?なら早く帰んねぇとなぁ」
悪化して熱でも出たらやばいし、と耕祐は笑って私の右手を掴んだ
耕祐。
ありがとう、耕祐。
私なんかのために。
私みたいな、価値のない人間のために。
気づけば、出会った日からいつもそうだった。
こうやって耕祐は私の手を引いてくれる。
だから私は、母さんがいない今でもこうして元気でいられるんだよ。
「迷惑かけて、ごめん………」
あ?と耕祐が振り向く。
握られた右手を少し引き寄せられる。
「ぜんっぜん迷惑なんかじゃねぇし!そう思うなら、俺がボランティアやってる超良い人だってこと女子に言ってくれよ。俺の株上がってラッキーだぜ」
耕祐の太陽みたいな笑顔に、つられて私も小さく笑う。
「お前さ、何でもかんでも背負い込みすぎなんだって。自分より人を優先するのは悪いことじゃねぇけど、限度ってものがあるだろ」
「は………?」
「お前、初めて会ったときから成長してないみたい。せっかく年重ねたんだ、もう人を頼っても良いんじゃない?」
……私は。
不覚にも、その言葉に涙を零してしまった。
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