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「……」
私は、海に向かった。
幸い場所的にも徒歩でいけた。
でも、砂浜に足を踏み入れたときにはもう日は大分傾いていた。
秋の夕暮れにうかぶ海。
引き込まれそうな、なんともいえない魔力を放っていた。
幼心にふと思った。
『……夜のうちに飛び込めば、騒ぎは大きくならないかも』
母さんに迷惑はかけたくなかった。
母さんには、私を生ませたことでかなりの迷惑をかけた。
その上私に死なれたら、産んだときかけた迷惑をもう一度かけられることになる。
それでも。
このまま生きることで母さんが傷ついてしまうというのならば。
『私は、この海に命をささげてみせる』
それで、大好きな母さんが幸せなら。
あんな最低な男に引っ付いていて、幸せだと思えるならば。
心から、自分の惨めさを笑った。
吐き気がした。
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