迎日

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「成程。そんな顔でそんな事を考えておったのか」  甚平の頭上から懐かしい声が降ってきた。  今この家の住人は全員お社にいる。人はいないはずだった。 「じいさん?」  驚き仰ぎ見た甚平は、驚きを隠せなかった。  傍らに佇む老人。やや目尻の下がった穏やかな瞳、年齢の割に豊かな毛髪と、堂々たる鬚髯。 「なんで?」  見紛う事等ある筈もない。甚平がこの家で最も多くの時間を共にした男。 「あんた死んだ筈だろうが」  そして昨年、家族と甚平に見守られながら没した男だった。  元から大きな瞳をさらに拡げるが、それでも足りないとばかりに目を離すことが出来ない。  一番の寵愛を受けていた甚平は、彼の死後ずっと引きずっていた。御歳二十を数える自身も、残った寿命が幾許かと考えていたのも起因するだろう。  それにしたって、周囲から見れば衰弱していると思われる程元気を無くしていた。
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