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迎日
全てを染める白い暴力。森も、川も、田畑も、家屋も、塗りつぶす。
都会から越してきたばかりの頃は、陽光に煌く化粧がただただ美しいと感じていた。それも一年の半分以上が似た景色だと気付けば、有り難みもなくなる。
土地の人間からすればそれが普通なのだ。
人が暮らすには不適切。車も満足に走れない。電気や水道ですら使えなくなる事が珍しくない。
しかし人はここで暮らす。
先祖が守り育んできた大地を棄てる事は出来なかったのだ。
凡そ日本国内とは信じがたい、俗世と隔離された部落。ここに生きる者は西暦が二千を数えて尚、神仏の存在を強く信じ、敬い、崇める。
今日から行われるのは、村で最も重要とされる神事、祖霊祭だ。
初日の今日は村人総出でお社に集まり、祭儀を行う。山の神となった先祖達の霊を村に呼びもて成すためだ。
「毎年の事で慣れたが、実に暇だ」
今は村の生活に馴染んだとはいえ、元は都会で生きていた甚平からすれば退屈な行事に違いなかった。
退屈なだけならまだ耐えられよう。しかし祭儀は屋外で行われる。お天道様がお目見えになっているとはいえ、家の外は寒い。とにかく寒い。
「人の業はとかく理解出来ぬ。先頃正月を祝ったばかりだというのに」
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