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「…っ痛!」
手を切った。
ベンチの尖っている杭に引っ掻けたんだろう。
普通に痛い。
「うぁっ!せん、大丈夫!?」
「ん?あ、あぁ大丈夫だ。」
まぁ壁に叩きつけられるよりはいくらかマシだわな。
「あれ?どこ傷つけたの?」
「なに言ってんだよ。ちゃんと親指に…」
ない?傷がない?
あんなに切った感触があったのに。
いや、確実に切った。
俺は見た。
幻覚ではない。
この目で。
「なんだろー。私とキスしたから治っちゃったとか?」
「それはないですね、はい。」
ぶーと言ってくるが無視をする。
しかしなんでだ…?
なぜ治ったんだ?
俺にそんな能力あったけな…
いや、ないはずだ。
「どうしたの?なんか…怖いよ?」
ただ考え込んでただけだかかなり怖い顔をしていたらしい。
慌てて作り笑いをする。
「あ、あぁ!平気だよ。心配してくれてありがとな」
頭をワシャワシャと撫でる。
「さーてと帰るかー!」
「うん!帰ろ!そして…えへへ♪」
ニヤニヤして変なことを考えているんだろうけどそのまま手を引っ張って身八の家に向かう。
俺の家は色々あって使えないのだ。
帰り道、そこには凪と弟の篝火。そして…誰?まぁいいか。
「よっ!凪。ここでなにしてんだ?」
「あ、あぁ。こんにちは、いやですね…」
「兄さんとで戦ってたんだ」
篝火が割り込む。
「へー。じゃあ足を庇ってたのはそれか?」
「そう…ですね…」
「ん?そしてその人は?」
「あ、私ですか!?私はー」
女の人が手を挙げて話はじめたときだった。
ドカンともガシャンとも言えない音が鳴り響き一面が砂埃だらけになった。
視界を奪われ身動きはできなかったが身八の手を固く握って離さないようにした。
砂埃が晴れたときに俺は驚いた。
つい最近まで月に行っていた…いや、もっと前から知ってる。
「よー!旋ちゃん♪」
人影が姿がみえるやいなや喋り始めた。
見覚えがあった、と言うのは当たり前だった。
「長…姉?」
その人は従姉妹にあたり家系図的にもかなりお世話になってる人之上家の一人、人之上長調だった。
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