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気性の荒いドクをまともに扱えるのはどの世界においてもシャークだけだろう。
シャークの存在は特別だった。魔王の系列である一族を壊滅に追い込み、電光石火の如くこの世界の頂点に上り詰めた。
この世界は弱肉強食。強い者が上に立つのは自然の理だった。
吸血鬼と言ってもピラミッド構造でレベルがある。人間は知っているだろうか。絵本やテレビで語っている吸血鬼が“吸血”するだけの生き物でないことを。
――そう、『能力』
彼等は使える『能力』によってレベル分けをされている。『能力』の数、操作力、そしてなによりも質。
この三つを持っているシャークこそが最高値のLv.5と称号を受ける資格を得る。
彼に王の血は流れていない。かと言って両親が異端であったわけでもない。全くの天然だった。彼の本来の力が目覚めたのはおよそ人間一人分の一生涯を越えた頃。
それからは皆が皆彼の元にかしずいた。歴代の王達以上に崇拝した。それは一種の宗教のように――
シャークは既に灰と化したそれを見下ろす。子供の頃、まだ両親が生きてた時に聞かされたこと。吸血鬼は誇りの高い種族。だから死ぬ時も決して死体を残さないと。
あっけないだけではないか。ちんけなプライドだなと馬鹿にしたものだけど、こうして側近を失うとなんとなくそうしたくなるのが分かる気がした。
レイヴンとドクは兄弟のように育ち、特に仲が良かったから、ドクにだけはそんな無様な姿看取られたくないよなと思う。
「ドク、いくよ」
「シャーク様、行くってどこに……」
「そんなの決まっているだろう?
あの子の家だよ」
彫刻家のターゲットになり得そうな美貌は不敵に笑った。
――
コンコンとノック音を辺りに響き渡らせればなんの警戒心もなく戸を開けた女性が出てきた。
人間界で言うとこの推定年齢20代前半の美女だが、ここ――魔界にいる時点で彼女もまた自分と同様の種族。見た目で年は判断出来ない。
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