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――『言質(コミットメント)』それは言葉による制約。この能力は非常に珍しく、それだけでLv.4に相当するほどに。
「する」と言えばする。「しない」と言えばしない。そうやってマリアは言葉に不思議な力を作用させる。これがまた厄介だった。要は約束を守らせる『能力』。「え~そんなこと言ったっけ~?」などとシラを切ることを許さない。
シャークは口約束にもなり得ない軽いノリで、「もしも見逃してくれたら、俺達は今後マリアには手を出さないよ」と言った。普通の感覚を持つ親であればそう簡単に娘をこんな悪の団体に明け渡さないだろう。しかし、マリアの『能力』は攻撃に適していなければ、統治を述べる王者に立ち向かえるわけがなかった。
そもそもこの世界でそんなことに勇気を使い果たすのは自殺志願者ぐらいだ。そうであっても彼等も生き地獄を味わいながら死にたくはないだろう。王である自分にお願いするんだ。当然楽には死なせたりなどしない。
――掟を破って許されるのは力があるものだけ。
己がそうだったように。
考えなしに突っ込んでくるのは愚か者がすること。
無権力者がうっかり誤って機関が認める『能力者』を殺したとしよう。そしたらその者は罪である。だけど、下克上を起こしたとしたらどうだ。Lv.5よりも上はない。だから、王を倒せばそいつが新しい王ということになる。
ただし、リスクも大きいが。成功すれば吉。失敗すれば凶。死刑はまず免れない。
すっかり『言質(コミットメント)』を取られたシャークだけど、収穫はあった。それはもうたんまりと。
やはりあれはマリアに直接害を与えなければ彼女自身に『能力』を使ったとしても問題なかった。なんせ、そこに“殺意”は含まれていないのだから。
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