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この流れでシャークがドクの手を取って握らせたものといったら一つしか考えられない――あの少女の“血液”だ。
なるほど、さすがはシャーク様、抜け目ない。そう心中暴れだしたくなるような衝動に駆られる。つくづくこの人の下につけることを誇りに思う。
「こんなこともあろうかと、食料に混ぜた睡眠薬でぐっすり眠ってもらってる間にね。……使う日がなければいいなぁ、って思ってたんだけどな」
「つくづくしょーもないガキですよね。いっそ野垂れ死ねばいいのに」
「ドク、それは聞き捨てならない」
「……、すみません。でも俺は、レイヴンをああした奴を許せません」
「俺だってそうさ。君とあいつと俺で今まで三人一緒だったのに、この喪失といったらないよ。だから俺も、あの子を許すつもりは毛頭ない。――少し、仕置きが必要みたいだ」
最後だけ低めにそう言うシャークは目を細めて視線を落とす。
脳裏では先程見た映像のこと。
『逆流(リターン)』――これは数多く所持するシャークの『能力』のうちの一つである。
対象者の記憶を遡る『能力』。いつどこで誰と何をしたか、プライバシーもへったくれもない効力がある。
使われた相手は特に違和感を抱かないため、大抵は気付かない。
マリアは数時間前に一人の少女と会っている――それこそがシャーク達の探し人なのだが。
そして、見えるのは切羽詰まった様子の少女とマリアが話している場面。内容までは聞き取れないけど、大方予想はつく。
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