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思えば負の連鎖は高校受験の時から始まった。受験日にインフルエンザにかかり、追試という処置をとらせてもらったがただでさえ難関私立名門校だ、合格圏ギリギリの本試験よりもレベルが上がっては受かる筈もない。
そして、それが合図とでも言うように滑り止めで受けておいた二流程度の高校も全部落ちた。
その時期からとなるとどこも受け入れが厳しく、親が行かせたくない高校No.1と不名誉なヤンキー校しか定員割れしていなかった。
両親は嘆いた。息子の人生はもうおしまいだと。今まで息子のためにと投資してきたお金は全て無駄だった。
その時、少年――佐倉真央の弟が教師や両親からも無謀だと言われていた有名私立中学に受かった。
それまで彼は優秀な兄と比べられ負け組と称されてきた。友人にも実の親にも今まで見向きもされなかった――が、ここへきて一気に風向きが変わった。
選手交替。これまで真央に捧げられてきた愛情が彼に移った瞬間だった。
真央は中学を卒業すると同時にマンションの一室を与えられた。月に十分すぎるお金を手切れに二度と自分達の前に顔を見せるなということなのだろう。
家を出る際見せた弟のあの蔑んだ顔が瞼の裏に焼き付いて離れない。元々好かれてる気はしなかったがまさかあそこまで疎まれていたなんて。
真央としては彼のことを別段嫌っていなかったのでショックだった。
――真央の不幸は始まったばかり。
それなりに覚悟はしていた。警察沙汰多数の学校だ、真央が15年間の人生で培ってきた知識は無に還ることだろうと。
優等生として一度も擦れることなく生きてきた真央にとって、この目の前に広がる光景は慣れろとか以前の問題だった。
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