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変に責任感の強い真央は一度少女の親に会ってガツンと何か言ってやりたくなった。しかし、その直後今の自分を見返す。着ている制服は特に袖の部分が酷く破れ、土や埃などで汚れてる。
おまけにこの殴られすぎて元に戻るか不安満載の顔を晒せばインターホンで会話する時点で即座に切られるかもしれない。いや逆にそんな真央と一緒にいる少女を思い直して引き取るか?
「お家はどこかな? 心配だから良かったらお兄ちゃんに送らせて貰える?」
「いえ、ない」
「え」
「ない、いえ」
最初は「言えない」――つまり迷子かと思ったが、次に倒置法で紡がれたそれに真央は青ざめる。追い出されたと解釈しても良いのだろうか。
目頭が熱くなる。千影に散々痛め付けられた時よりも胸が締め付けられた。真央は情に熱い人間だった。
「そっか。ごめんね、嫌なこと聞いちゃったね。ここから少し歩くけどお兄ちゃんの家いこう。まずはお腹を満たさないと。それから今後について話し合おう」
餓死でもしたら大変だ、その言葉を飲み込んで真央は少女の手を握る。やはり少女の手は冷たかった。この場合交番に行くべきなのだろうがそしたらいつ少女の空っぽな胃袋が満足するか分かったものではない。
今日はたっぷり真央の家で休ませ、それから交番へ送り届けても遅くはないだろう。
少女は真央の言葉に静かに頷いた――
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