3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ゴン!あの丘まで一緒に走るよ!」
「ワ・ワン!」
ひかりはリードを離してゴンと競走をした。
やや走りがもたつきながらも必死についてくるゴンを尻目に、上り坂をどんどん走る、走る、走る。
途中で自家製豆腐屋のおばさん主人とすれ違った。
「豆腐屋のおばさん!おはよー!」
おばさん主人も手を振りながら、
「おはよう!」
と挨拶を返した。
丘の上まで休むことなく走り続け、
「ゴール!」
ひかりは丘にたどり着いた。まだ朝日が昇りかけているきれいな空と街を見渡し、胸で息をすることもなく、腕を組んで淡々とその景色を立ちながら眺めた。
「今日から俺も女子高生。はあー、華のJKだよ」
そんな独り言をぶつぶつ呟く。ちなみにひかりは自分のことを「俺」と呼んでいる。いわゆるオレっ子である。
「どんな高校生活がまっているのかなあ……。文系に進むか、理系に進むか、制服、ファッションも。カッコイー人もいるだろうし、うしし、ニヤニヤが止まらないなー。わくわくする!あ、それと部活……って」
一緒に競走していたはずのゴンがまだ来ない。
「ヤバ。戻らなきゃ。入学式もあるんだし」
軽くストレッチしたあと、歩いて丘を下った。
やがて豆腐屋の看板が見える所まで来ると店の前辺りの道路でバタンと横に這いつくばっているゴンが荒い呼吸をしながら尻尾を振っていた。
「ゴン、こんなところでなにしてんの。でもま、ほっとした」
店からおばさん主人がでてくる。
「あ、おばさん。朝早いね」
「ひかりちゃんこそ。今日から高校生になるんだね。立派になったね」
「うん。楽しみ」
「その体力があればなんでもできるわよ」
「へへ。おばさん。豆腐3丁ちょうだい」
「はい。入学祝いね」
「ありがと!またね」
ひかりはすぐさまランニングで家路へと急いだ。
ひかりの新しい学園生活。県内の超有名私立高校「桜華高校」へ進学したのだ。
最初のコメントを投稿しよう!