桜華高校入学式

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 気づけば俺以外みんなが部活動のユニフォームを着て席についている。 (もうみんな部活動決めてユニフォームまで新調してるんだな。学生服きてる俺だけが浮いてるなんて間違っている。ぜってー間違っている!)    俺の席の位置はちょうど真ん中あたり。  うああ、担任の先生待ちのこの時間が苦痛だ。 (あれ?一人だけ学生服の人いるじゃん。女子だけど。ふう、安心した)  その女子は窓際の一番前の席に着いていて、窓の空いた隙間から入るふんわりとした風が、耳が隠れている程度の長さのショートヘアをそよぐ。丁度いい丈の制服のミニスカートも揺れている。後ろからその姿にしばし見とれた。 (あの子だけは、運動部じゃないのかな・・・)  その考えはいい方向へと変換されていった。まてよ、学生服の男女は俺と彼女のひと組だけだぜ。なんかお互い意識しちゃうじゃねーか。あの子は文化系。絶対文化系。  ホームルームは早めに終わり、すぐさま解散となり教室の前には体育着の生徒が多数に廊下で並んでいた。こちらの教室の中を覗いたり、クラスメイトとなったばかりの生徒に声をかけている。どうも運動部の諸先輩のようだ。 (あ、部活への勧誘だな。俺みたいな学生服着ている生徒をみつけたらそれこそ取り合い合戦になるかもしれねー)  最初から運動部に入るつもりは毛頭ない。適当に文化部に入って幽霊部員になるか、帰宅部として少しでも勉強に集中する身になるかな、とバッグを肩にしょいながら考える。  この教室は校舎の3階にあって、1年生の教室が3階で2年生の教室が2階となり、1階が3年生の教室となっている。勧誘している諸先輩達に声をかけられるのを避けるため教室のベランダにでて時間を稼ぐことにした。下を見ればグラウンドの脇に咲く桜の花々が淡いピンクの色をまといざわわと揺れている。
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