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「君、部活にはまだ入ってないの?」
彼女は俺の声に気づき、グラウンドの方に向いている姿勢をこちらに向き直した。
彼女のスラッとした体型を見ると、一切の無駄がない体つきをしている。背は俺と同じぐらいかな。女性人気ファッション誌のモデルのような体型と比べても劣らないんじゃないか。
彼女は僕をメガネ越しにみつめる。その瞬間、俺はドキっとしてしまい、緊張が体をはしるのがわかった。彼女はメガネを何回も指で直して、
「……えーと。……えーと。部活は入ってないよ。じゃなかった、入ってないですの」
「そうなんだ。もしかして君、運動部に入るん?」
「えーと……。わたし文化系だから運動部には入れないですの」
はいキタ!!俺の心は歓喜で満ち満ちた。緊張は消え、安堵がスっと全身の力を抜くように体を包む。そして彼女は続けた。
「ですのでただ一つの文化部にはいるんですの」
「え?この高校は文化部は一つしかないのか。マジかよ。どんな部活?」
「生徒会」
「げえ!?生徒会しかない!?」
「俺!……じゃなかったわたくしは、この高校のために生徒会の役割を、ええと、担い生徒が心おきなく過ごせるようことができるように頑張りたいと思って、いますの」
「生徒会に立候補するんだ。偉いね。俺は文化部に入りたいと思ってたけど生徒会しかないんじゃ帰宅部に立候補するよ。はは」
「ふふ。君、名前は?」
「俺はゆうすけ。風川ゆうすけってんだ」
「わた、わたくしは雛乃ひかりだよ。よろしくね」
「こちらこそよろしく。立候補、当選するといいね」
「そうだね、……じゃなかった。そうね」
「……?」
「いやなんでもないですわよ。それでは失礼!ごめんあそばせー」
そういうとそそくさと雛乃ひかりは教室に戻りカバンを掴んで去っていった。なんか変わった子だよなあ・・・。でもなんか好感触。こりゃ仲良くなれるかもしれないぞ。ムフッ。
俺は早速、帰宅部決定だな、とぼんやり考えながら家に帰った。
自分の部屋に入り、部屋着に着替えて横になり彼女のことを思った。
きっとあのメガネがなければ声をかけることはできなかっただろう。メガネをかけていなければ彼女の瞳を直視すらできなかった。それほど魅力的な瞳だった。
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