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桜の花が咲きはじめ、暖かい風が吹き抜ける春。
新学期に胸を踊らせているであろう同級生とは違い、私は病室で外を眺めていた。
この病室で春を迎えるのは、もうかれこれ三回目になるだろうか。
いつになったら私は学校に通えるのだろうか…。
そのことばかり考えるようになっていた。
ーガラッ
ぼーっと外を眺めていると、不意に病室のドアが開いた。
「亜季、そんなぼーっとしてねぇで、外いくぞ!外!」
突然の訪問者は太陽の様な明るい笑みで私の頭をぽんぽんと撫でる。
彼は中学の時のクラスメイトで、この病院の跡取り息子でもある土谷宏太くん。
週に一度は必ず私を連れて、病院の庭を散歩してくれる。
「いつもありがとう、宏太くん。」
感謝の気持ちを込めてそう伝えると、不機嫌そうに顔をしかめてしまった。
ーあれ?なんか変なこと言ったのかな…私。
理由がわからず首を傾げて考えていると、彼の顔がぐっと目の前に近づいた。
「えっ、…?」
「あのさー、もう三年も一緒に散歩してる仲なんだから、くん付けは止めにしない?」
むっとした表情のまま至近距離でじっと見つめられる。
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