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「え…でも、そんないきなり…。」
曖昧に言葉を返すと、はぁ、とため息をついてベット脇にあったイスに腰掛けた。
私は宏太くんとの距離が離れてほっとした反面、どきどきと高鳴る心はなかなか治まらなかった。
「…まぁ、いきなり呼び捨ては出来ないかもしんないけど、これからはくん付けしないように練習しろよ?…じゃないと、もう散歩してやんねぇぞ?」
苦笑しながら散歩のために車椅子を準備し始める宏太…くん。
ーやっぱり呼び捨てなんてできないよ…。
「もう、随分暖かくなってきたねー。」
ー外に出るとより爽やかな風が肌に感じられた。
「うちん学校、そのおかげで来月マラソン大会やるんだってよ。まじでダルイわー。」
はぁ、とため息をつきながら私の車椅子を優しく押してくれる。
私はこのなんでもない話をしながら散歩するのが今一番幸せ…。
だけど…。
「…いいなぁ、学校。」
普段あまり口にしない言葉が、思わずぽろっとこぼれた。
「亜季…。」
「…なーんてね。」
宏太くんが心配そうな表情で私を
見ているのが分かって、わざと笑顔を作った。
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