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「これで分かっただろう。
この宇宙は絶妙なバランスの上で成り立っている。もしもその秩序が狂ったら、全てが狂う。
この地球だってそうだ。
太陽との絶妙な距離の上で成り立っている。太陽への距離がもっと近ければ、水素だけの星になっていたし、もう少し遠ければ氷の星になっていた。奇跡とも言える事実だよ」
「なるほど……」
軌道の事を忘れたように、神守は話に聞き入っていた。
「ついでだから話すけど、例えばここに不純物が全く入っていない、コップの水があったとする。
これに、命の源であるたんぱく質が偶然に発生する確率は、どれくらいだと思う?」
普段は上司と部下の関係だ。話題は宇宙に関する事が多い。このように地球そのものに踏み込んだ話は、神守には新鮮だった。懸命に考え答えを探ろうとしている。
──だが
「分かりません。想像もつきません。教えてください」
──そうだろうな。
瀬戸山は当たり前のように頷いた。
「これは物理の本に載ってたんだけど、その確率は、10のマイナス120乗(じょう)だといわれている。
つまりは、0、000……とゼロが120続いて、ようやく1となる。つまりは果てしなくゼロに近い。
だけど地球には、様々な命で溢れている。
哺乳類、爬虫類、魚類、鳥類。それから植物にしてもだ。
これこそ奇跡だとは思わないか?
俺は特に宗教は持たないが、こんな事実に出会ったら、神の存在を考えてしまうよ」
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