彼方からの贈り物

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  しかし、瀬戸山の努力は水泡と化した。 翌日、観測結果をセンター長に報告をしたが、その内容は悲観的なものだった。神守の計算は正しかったのだ。 現在の地球への衝突確率は、45パーセント。衝突時期は18ヶ月プラスマイナス3ヶ月。かなりの速度で宇宙空間を進んでいる。 それから正月返上で職員全員で軌道確認を行ったが、衝突確率が増すばかりで、その度、絶望感が重くのし掛かる。 ──衝突は免れない── その結論に達した。 結果を受け、責任者であるスペースガードセンターの理事長は、内閣官房室に報告をあげた。 通常国会開催前とは言え、太田黒(おおたぐろ)首相の対応は素早かった。 スペースガード関係者にかん口令をひくと同時に、閣僚で事実を知る者は佐川(さがわ)官房長官と、前園(まえぞの)外相の二名にとどめた。 鷹派と言われるように強硬路線を敷く太田黒にあって、この二人は同じ派閥だ。信頼は厚い。 他の派閥から選出した残りの大臣への信用度はどうしても低いものになる。正しい処置だろう。 事が事ゆえに、万が一閣僚からマスコミや国民に漏れる事があれば、予想だにしないパニックが発生する事は確実だ。 知る者は少ないにかぎる。 いくら慎ましやかな日本人だとは言え、100パーセントの確率で死ぬ。そして助かる道は無い、と言われれば冷静で居られるはずもない。 略奪、暴行、殺人、主義主張のないただ助かりたい欲望のみの暴動が発生し、日本中が無秩序状態に陥る事は想像に難くない。 即日太田黒は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、日本宇宙フォーラム(JSF)、日本スペースガード協会(JSGA)の三者の他に、日本の著名な宇宙工学博士、物理学者ら、『必要最低限度の人数』を選抜召集し、秘密裏に対策会議を開いた。   
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