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今度は前園が機嫌を窺いながら聞く。
「どうやれば、そこまでアメリカ大統領と親密になれるのですか?」
太田黒の顔は、一瞬で悪魔のように変貌した。ゆっくりと親指と人差し指で丸を作った。
「金だよ、金。ダラスのフトコロにはすでに、一千億の金が流れてる。
お陰でダラスは大統領に再選された」
一千億!
聞いた二人は飛び上がる程に驚いた。
一体どこから──
佐川と前園の顔色を読みとったようだ。太田黒が暴露した。
「政府には領収書のいらない金があるだろう」
二人は同時に首を傾げる、が。
ついには──
「予備費の事ですか?」
太田黒は応える代わりに、にやりと笑う。
訳が分からない。佐川が聞いた。
「しかし、その為には閣議決定して、国会での事後承認が必要なはずですが……」
太田黒の悪意に満ちた顔は変わらない。
「当然だ。ちゃんと道筋は踏んでいる」
更に佐川が食い下がるが、消え入りそうな語尾だった。
「じゃあ、どうやって、その……」
太田黒は言下した。
「米軍駐留費が足らない、という名目で払った。つまりは、思いやり予算の上乗せだ。その金はその後、アメリカ国内でダラス個人に流れていった」
──ああ、それなら決議した。
と、言う事は、つまりは……。
太田黒は歯牙にもかけない素振りで応える。疚(やま)しい事など、何も無いとまでに胸を張る。
「いわゆる、迂回献金だ」
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