彼方からの贈り物

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  「バカかお前らは! 今、話すと必ず漏れる。漏れたらすぐに日本中がパニックだ。少しは考えろ! いいか、選出するだけで動くな。 実際に誘うのは、事が明らかになってからだ。空に月よりもデッカイ星が見えたら、誰でも助かりたいだろう。家族も一緒にな。 その時に話を持ち掛ければ、ホイホイと犬のように参加する。 つまりは、蜘蛛の糸を垂らしてやるんだ」   一呼吸ついて── 「ただし、そいつらの家族は火星に行ったら人質だ。実際、役に立つのかも分からないし、俺に逆らうかも知れないからな」   まるで地獄を支配する閻魔大王のようだ。 震えながら佐川と前園の両名は、最上級のお辞儀を残し退出した。 太田黒は忌々しげに吐き捨てる。 「まったく使えない奴らだ」 ──まあ、いいか。奴らも駒だ。 今はアメリカの言いなりだが、火星に行ったら俺が天下を取ってやる。 日本の技術力をもってすれば、トップになれるはずだ。いや、絶対になる! まずは世界政府を樹立して、俺が初代大統領になってやる。 見てろよ。アメリカもロシアも中国も、俺の意のままに動かしてやるからな。 「ふふふ……」 沸き上がる笑いと欲望を腹の底に無理やり押し込んで、デスクに行き受話器を上げた。 「すまないが、アメリカのリチヤード・ダラス大統領に繋いでくれ」 太田黒はくるりと、椅子を回す。 窓から射す眩しい新春の陽を、その全身で受けとめた。 ──希望の光りだ。  
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