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瀬戸山は引ったくるように神守からプリント用紙を奪った。全てに目を通し嘆くような息を吐く。
──冗談じゃないぞ──
──衝突まで一年半だと──
怒声に近い命令だった。
「他に資料があれば持って来い! おれも確認する」
はい、と返事を残し自席に向かう途中、神守が振り返る。
「瀬戸山さん、もしも軌道が逸れて月に衝突したらどうなります?」
──月だと?
瀬戸山はモニターから目を外し天井を仰いだ。
「それでも地球に待ってるのは、壊滅的な気候変動だろうな」
自席に着いた神守が首を傾げた。
「と、言いますと?」
瀬戸山は当たり前のように答える。
「地軸変動が起きる可能性が高い」
神守には理解出来ないようだ。ますます首を傾げ口を開く。
「地軸の変動……ですか?」
瀬戸山はふーっ、と長い息を吐いた。興奮を静めようとしたのだろう。
「まあいいや夜は長い、軌道観測は後にするか。せっかくの機会だから話しておこう。
北極点と南極点を結んだ線を公転地軸と言って、この軸を中心に地球は回っている。
そしてこの公転地軸は現在、23、43度傾いている。お陰でこの日本には四季があるんだけどな。
ここまでは分かるな」
神守はゆっくりと顎を引いた。
瀬戸山の話は続く。
「月との引力の関係で、地軸角度は1度も狂っていない。だが……もしも月が無くなれば、このバランスが崩れ地軸がもっと傾くかも知れない。
もしも、地軸が90度に……つまり地球が真横に傾いたらどうなると思う?」
「真横に? つまり北極と南極を結んだ線が、現在の赤道上になるんですね?」
──そうだ。
「その結果、地球はどうなる?」
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