リターン・ザ・ワールド

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第一章 美しき世界と、思い出のコンパウンド 心を落ち着けてくれる碧空、心を癒やしてくれる碧海。 キラキラ輝く砂浜、緩やかに流れる碧雲。 名前もないこの島で、今の俺が見ている景色は客観的に見て、美しい。 昼には多くの人々で賑わう街。 夜になると、暗闇に包まれた視界を暖かく照らしてくれる松明の灯り。 未だ誰もその全容を把握していないであろうこの大きな島、大きな海。 平等、相互扶助を掲げて日々を生きる人々。 それが、今の俺が見ている世界。 俺には、色あせて見える世界。 俺は、俺の見るこの世界が――少し、嫌いだ。  俺たちの住むこの集落は中心にある市街地、集団居住区、一般居住区、はずれに位置する重労働区によって構成されている。  それぞれが川沿いにあり、人々は川から生活用水を得て暮らしている状況だ。  重労働区では鉱山で採掘作業を行っている人や、材木等を伐採、建築用の石を調達、加工することを生業とする人が住んでいる。  この重労働区の労働者が得た資源は貴重な街の収入源であり、時折中央に持って行っては共通通貨である『ライト』に換えてきている。  ライトはここ数十年前から普及し始めた。このライトが出来たおかげで、物の流通もスムーズにいくようになったそうだ。 俺はこの町の一般居住区にある家で生まれ育ち、今もその家で暮らしている学園生。  俺の通う太平学園は、一般居住区の中央に位置し、生徒数はおよそ500人程度。  身内に精神病をもつ、もしくは生徒自身が精神病である生徒が通う精神科。  身内、もしくは生徒自身が健常者となる見込みのない大きな障害、重大な疾病を煩っている生徒の通う障害科。  血縁に犯罪者がいる、もしくは生徒自身が犯罪を犯した経歴のある生徒が通う犯罪科。  これら複数の条件に当てはまる場合、入学前に通う学科を自由に選択することができる。  複数の条件に当てはまらない生徒は、入学前に学科振り分け通知書が自宅へと届く。  学園の全生徒がこの三つの学科に分けられ授業を受ける。  なぜわざわざ生徒をこの三つの学科に分ける必要があるのか。  それは、個人の特性によって出来ること、出来ない事、得意なこと、苦手なことがあるからである。  個々の学科によって苦手なことを補うような教育をする、そう俺たちは説明されている。  学科に分けられているとは言っても、クラス編成は全学科混合である。
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