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クリスは非常に礼儀正しく温厚な性格で、荒んだ世間に傷つけられた俺の心をいつも癒やさしてくださる天使。その微笑みをみているだけで、心が綺麗になるようだ。
クリスは赤い縁とレンズで構成された『眼鏡』と呼ばれる道具を常時身につけている。
なんでも、その赤い眼鏡は亡くなった祖母の遺品らしい。
眼鏡は『中央』の大市場に行けば時折見かける品らしいが、島の辺境に位置する俺たちの集落の市場にはまず流れてこない貴重品だ。
クリスが日夜肌身離さず大切そうにしているのも頷ける話だ。
俺が主に学校で一緒につるんでいるのは蓮華とクリス、更に今日は欠席している障害科の修、精神科の犀の4人だ。
修は俺の親友(?)らしい。――だが、修は率直に言って残念な奴なのだ。
いつもどこかをふらふらと歩き回っていて、学校にはあまりこない。
別に不良というわけではないのだが、修曰く浪漫が呼んでいるから学校に来れないらしい。この時点で既に残念な頭をしていることがお解りいただけるだろう。
犀はクール美女。修同様、学校にはあまり来ない。――いや、犀の場合は来ないと言うよりも来られないの方が正しい。
犀は、特殊な事情を抱える者の多いこの学園の中でも、一際特別な事情の持ち主だ。
その他、俺のクラスにいる奴らは基本的に楽しく気のいい奴らばかりだ。
そんな奴らに囲まれた学校生活は、客観的に見ると、とても充実して楽しそうだろう。
――だが、主観的に見て楽しいのか、と言われるとそうとは言い切れない。
この学校では色々な出来事があって、退屈はしない。笑えることもあるし、楽しいと思うことももちろんある。
でも、クラスメイトと話しをして笑っていても、心のどこかで『くだらない』とか『本当にこれでいいのか』とか、妙な感情が邪魔をして本気で楽しめない。
いや、そもそも学校に楽しさを求めること自体が間違いなのだろう。
学校とは、勉強をする場所だ。
学業に真剣に取り組み、教師からの信頼も厚い優良生徒である俺には、クラスメイトとの必要以上に深い関わりなど「おい、如月。そこのいい加減男。もうHR始まってるぞ。起きてんのか?」――必要ない。……そう、俺のように、真面目な生徒には……な。
「起きてますよ。真面目で優良生徒な俺が、学校で寝るわけないじゃないですか」
「にゃはは! 流石はぼくの香ちゃんだね、朝からすべりませんな~」
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