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「ふふっ。香介君は相変わらず冗談が好きなんですね」
「「「如月香介許すまじ!」」」
朝から先生にいじられ、蓮華とクリスにもいじられ、さらにクラスメイト達からも嫉妬されるとは……。
朝から本当にごちそうさまです。
「まあ、そんなに落ち込むな。むしろ喜べ。なんと、このクラスに転校生が来ることになった!」
「へえ、それは凄い。目の前に雷でも落ちてきたが如く驚きました」
「だったらもっと表情を変化させろ。教師を馬鹿にしてんのか。ま、少し暗い性格だが、美女が転校してきたんだ。お前も男ならもっと喜べ」
「「「美女、俺たちの時代キタ――――――――――!!」」」
「……さすがにこいつらほど、素直になれとは言わんがな」
クラス担任の言葉に男子のほぼ全員が歓喜の声をあげた。
「どうやら、その子は如月がいるからこの学園に来たらしいぞ?」
「「「ふ、ふざけんなゴラァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」
先生の話した事実を耳にしたクラスメイトたちは悔しそうに、もしくは信じられないとでも言いたげに発狂した。その光景は酷く滑稽で、さながらお気に入りのおもちゃを目の前で壊された幼児のようだ。今の俺から見ると、クラスメイトは無様な負け犬の群れに見える……ッ!
そんな無様な姿を晒す負け犬共ではあるが、同時に同じ場所で時間を共有する大切な仲間でもある。
ここは極力みんなを傷つけないよう慎重に言葉を選びつつ、落ち着いてもらえるように働きかけよう。
「格の違いを素直に受け入れろ、愚民共」
――刹那の後、俺の身体は男子の群れにさらわれていった。
この光景をはたから見ていた某幼児体型の女子は、「死体に群がる等身大をしたアリの大群を見た気分だよ……」と後に語っていた。それはさぞかし気持ち悪かったにちがいない。
先生が全力で抑止してくれた成果か、男子の暴動は十分程度で収まった。
「おまえらは、はぁ……はぁ、その元気を違う方向には向けられないのか……?」
息も絶え絶えに担任が言う。他の男子(俺を含む)も全員が似た具合だ。
「――まぁ、いい。随分とまたせてしまったな。とりあえず、入ってくれ」
担任の言葉に勢いよくドアを開け、教室に入ってきた女生徒を見て、男女問わずクラス全員が息を飲んだ。
それはきっと転校生がただ美女だから、という理由だけではない。
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