わかっていた別れ

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「待て!ならば私は……私は、敵の奇襲を成功させるために、実秋様から遠ざけられたのか……っ!」  いきなり襖がバシンッ!と開け放たれたかと思えば、外で話を聞いていたのであろう和之さんが大声を上げた。  和之さんによると、彼は昨日の晩に父上から任務を与えられた。里の近くの森で怪しい忍が頻繁に目撃されているから、朝まで探れ。  それが、任務。和之さんを巻き込まないための口実。和之さんが、絶対に命令に背けない性格だとわかっていたからこそ、父上はこのやり方を選んだ。  側近の和之さんを遠ざけてまでして、わざと殺された。本当に、そう?どうして、理由は? 「しかし、いくらなんでも侵入者に誰も気づかないなんて。影秋も気づかなかったんですか?」 「そのことだが、犯人の目星はおおよそついている」  風霜一族で2番目に優秀な和之さんが不在だったとはいえ、外から忍び込まれたなら誰かが気づくはず。ここは暗殺に秀でた、熟睡していても気配に気づける忍がたくさんいる忍の里。  特に影秋なら、人一倍気配に敏感だからすぐに気づくはず。 「現在姿をくらませている、影秋か孤月。もしくは2人の共犯だ」  そんな、馬鹿な。和之さんが瞳に怒りを宿して告げた2人の名前に、俺は息をのんだ。  きっと2人のことをよく知っている者なら、こう考えるんだろうね。常日頃から孤高の浮き雲だった影秋が犯人で、そのことに気づいた孤月さんが追いかけている。  群れることを嫌い誰よりも孤独な忍の影秋。父上をいつも嫌い憎んで、それをずっと続けていた。何かがあって、ついに爆発してしまったか。
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