わかっていた別れ

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 俺もそう思う。そう思った方が、1番すんなりする。だけど、弟を――影秋を信じたい。かと言って孤月さんが犯人だとも思いたくはない。  いつも明るく元気でおちゃらけていて、俺を笑わせてくれる優しいお兄さん。そんな彼が父上を殺してしまうほどの憎しみを持っていた?いや、俺には考えられない。  いつも1匹狼な影秋と、最近怪しい動きが目撃されて、要注意人物となった孤月さん。どちらも疑われても仕方がないと言えば仕方がない。  1番の希望は、やっぱり部外者が父上を殺した犯人で、影秋と孤月さんが追跡しているということ。  甘い考えだっていうのは重々わかっているさ。それでも、信じてやりたいんだ。血がつながっていようとそうでなくても、2人は俺の大切な家族だから。  グルグルと渦を巻いていく思考を落ち着かせようと大きく深呼吸をすると、すぐ隣から同じように深く息を吸い大きく吐く音が聞こえた。 「……そうか。ついに、この時が来てしまったのか」 「夏葉さん?」 「大事な話がある。うちの娘達も急いで呼ぶから、一緒に実秋の墓を作ってやろう」 「そうですね。実秋様をこのままにしていては祟られてしまいそうですから。死してまで世話を焼かせないよう早急に取り掛かります」  夏葉さんは父上の手を握って、俺の目をまっすぐ見つめた。小夏ちゃんと同じ赤い目は力強く、何かの決意を表している。  夏の双子を呼ぶほどの大事な話ということは、風霜と鈴ノ宮、両方の一族に関わるとても重大な話なんだろう。  甘夏ちゃんと小夏ちゃんがここに来る。昨日のこともあるし、どうしよう。どんな顔をすればいいのかわからない。緊張する、ちょっと怖いな。
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