わかっていた別れ

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「お、お初にお目にかかります。紗奈と申します。その……み、光秋様の、遠い親戚になりますぅ……」 「あ、そうなんだ。初めまして。ごめんね。俺、あんまり皆の事知らなくて」 「いっいえ、構わないんです全然!会ったこともない人をわからないのは当たり前で……それに、言ってみたかっただけで、私は、下っ端ですから…」 「ううん。下っ端でも、大事な家族なんだから知っておきたいんだよ。ところで、もしかして影秋に何かされた?」 「ひぃっ!!いや、な、何も……大したことじゃ、ないですから……っ」  うわぁ。この反応、絶対に何かされたんだな。無理に聞き出したら泣き出しかねないし、今は聞かないでおこうか。こんな小さい子に一体何をしたんだよ、もう。  紗奈ちゃんは小夏ちゃんと同じくらい背が高いけど、たぶん竜助よりも年下かな。  竜助は必ず目上や年上の者には敬語を使うから、紗奈ちゃんに普通にしゃべっているということはそうなんだろう。それにちょっとだけ雰囲気が、お兄ちゃん。なんて言ったら怒られてしまうかな? 「紗奈ちゃんはいつもこんな感じなのかい?」 「はい、いつも大体はこんな感じですね。もう癖のようでどうにも直らなくて。あ、紗奈とはここで先代の当主様の話をしていたんです」  そうなんだ。歳も近いし、2人は仲良しなのかな?親友というよりは、兄弟に見えるんだけどね。  今だって、まだ俺の顔が怖いのか紗奈ちゃんが竜助の着物の袖をつまんでいるし。まるで頼もしい兄にすがる幼気な妹みたい。  竜助も、こんな可愛い妹がいたら嬉しいだろうな。いや、もしかしたらまだかなり気が早いかもしれないけど、将来のお嫁さん候補かな?
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